予防接種(ワクチン)

ワクチンとは

予防接種

体が細菌やウイルスなどの病原体に冒されると、ヒトの体内で免疫(抵抗力)をつくり出します。ワクチンは、このように体が反応する免疫のしくみを利用したもので、感染症を引き起こす細菌やウイルスを基にしてつくられています。これら病原体に冒される前にあらかじめ体内に免疫をつくって防御を促すのがワクチンによる予防接種の目的であり、「不活化ワクチン」と「生ワクチン」の2種類があります。 不活化ワクチンは、細菌やウイルスの感染能力を失わせた(不活化した)ワクチンで、生ワクチンは細菌やウイルスの毒性を弱めてつくられています。不活化ワクチンは複数回の接種が必要ですが、生ワクチンは不活化ワクチンに比べると接種回数が少なくてすむという特徴があります。 また、ワクチンには、接種に際して自治体が費用を負担してくれる定期接種(一部自己負担が発生する場合もある)と、費用が完全に自己負担となる任意接種があります。

特殊なワクチン

その他、近年世界中で大きな問題となった新型コロナウイルスによる病気の予防や、海外渡航をする際にその目的地での病気を予防するワクチンなどにも対応しています。

新型コロナワクチン

種類:メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン
臨時接種
接種回数:初回2回、追加接種あり
新型コロナウイルスによる感染症を予防するワクチンです。ファイザー社製は5歳以上、武田・モデルナ社製は12歳以上が対象となっています。どちらも初回は2回接種。12歳から17歳の追加接種ではファイザー社製を使用します。

渡航ワクチン

海外渡航する際に接種します。ほかに、黄熱ワクチン、A型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチンなどが必要となる場合もありますので、渡航が決定したら出来るだけ早めにご相談ください。

ワクチンの種類

当院では次のようなワクチンの接種が可能です。

B型肝炎ワクチン(母子感染予防を除く)

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:0歳定期接種 1歳任意接種
接種回数:3回
B型肝炎と将来の肝臓がんを予防するワクチンです。0歳のうちに3回の接種が必要となります。3回目の接種は2回目から4、5カ月間隔を空けて受けることが推奨されています。1歳以上であっても未接種ならば、出来る限り早く接種することをおすすめします。

ロタウイルスワクチン

種類:生ワクチン(飲むタイプのワクチンです)
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:2回
ロタウイルス感染症を予防するワクチンです。ロタウイルス感染症は、特に2月から3月にかけて多く発症する、急性胃腸炎を引き起こす病気です。感染力が強く、かかると重症化しやすいという特徴があります。
接種は生後6週から可能ですが、生後2カ月で接種するヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチンを同時接種すると、早期にワクチン接種を終わらせることができます。
また、ロタウイルスワクチンには1価ワクチン(いちばん流行して重症化しやすいウイルスを弱毒化したもの)と5価ワクチン(1価ワクチンに含まれるものにプラスしてさらに4つのウイルスを弱毒化したもの)があります。接種回数が異なりますので、詳しくはお問い合わせください。

ヒブワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:4回
ヒブによる細菌性髄膜炎などの重い感染症を防ぐワクチンです。細菌性髄膜炎は、患う子どもの半数以上が0歳児で、早期診断が難しく重症化しやすい病気です。生後2カ月から接種が可能なので、ロタウイルスワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチンとの同時接種をおすすめします。

小児用肺炎球菌ワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:4回
細菌性髄膜炎や肺炎など、肺炎球菌によって引き起こされる病気を予防するワクチンです。2歳以下の子どもは肺炎球菌に対する免疫がほとんどありません。そのため肺炎球菌によって起こる病気は重症化しやすいという特徴があります。
このワクチンは生後2カ月から接種が可能です。ロタウイルスワクチン、ヒブワクチン、四種混合ワクチンとの同時接種をおすすめします。

四種混合(DPT-IPV)ワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:4回
ジフテリア(D)、百日せき(P)、破傷風(T)、ポリオ(IPV)を予防するワクチンです。ジフテリアは現在の日本では罹患するケースはほとんどありませんが、欧米では未だに亡くなる方がいます。
百日せきは母体からもらう抗体が弱いので、新生児がかかることがあります。6カ月以下、特に3カ月以下の乳児がかかると重症化するので注意が必要です。
破傷風は傷口から菌が入ることで起こります。また、ポリオは感染しても無症状、もしくは風邪のような症状が多いですが、手足にマヒが出ることもあります。
ロタウイルスワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンとの同時接種をおすすめします。

BCGワクチン

種類:生ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:1回
結核を予防するワクチンです。結核は、昔は日本人の死因の第1位だった病気で、3、4歳以下の小児、特に1歳以下の場合は重症化することが多くあります。生後5カ月から7カ月で接種することが推奨されていますが、適しているのは、四種混合(DPT-IPV)ワクチンを3回接種した後、生後5カ月頃です。

MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)

種類:生ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:2回
麻しん(はしか)と風しんを予防するワクチンです。どちらも感染力が強く、麻しんは命が危険に晒される脳炎などの重い合併症を引き起こすことがあります。
一方、風しんは重症化することは稀ですが、気づかないまま他人にうつしてしまうことがあります。1歳の誕生日が来たらすぐに接種することをおすすめします。
ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンとの同時接種も可能です。

水痘(みずぼうそう)ワクチン

種類:生ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:2回
水痘を予防するワクチンです。水痘はあまり重症化することはありませんが、感染力が強く、重症化した場合は脳炎や肺炎といった合併症を引き起こすことがあるので注意が必要です。1歳の誕生日が来たらすぐに接種することをおすすめします。
ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチン、MRワクチン、おたふくかぜワクチンとの同時接種も可能です。

おたふくかぜワクチン

種類:生ワクチン
定期接種or任意接種:任意接種
接種回数:2回
おたふくかぜを予防するワクチンです。おたふくかぜは水痘同様、あまり重症化することはありません。しかし、もしも重症化した場合は脳炎を引き起こしたり、一生治らないような重度の難聴になったりするようなこともあるので油断は禁物です。1歳の誕生日が来たらすぐに接種することをおすすめします。
ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、四種混合ワクチン、MRワクチン、水痘ワクチンとの同時接種も可能です。

日本脳炎ワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種
接種回数:4回
日本脳炎はかかっても無症状であることが多いですが、脳炎を発症すると障害が残ったり、場合によっては死亡するようなこともあり、大変恐ろしい病気です。3歳からの接種が一般的ですが、生後6カ月からの接種が可能です。

インフルエンザワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:任意接種
接種回数:13歳未満毎年2回、13歳以上毎年1回(2回接種も可能)
冬場に猛威をふるうインフルエンザを予防するワクチンです。インフルエンザは風邪と同じような症状ですが、重症化して肺炎、脳炎などを引き起こすことがあります。
生後6カ月以上13歳未満までは秋に1回目を接種した後、できれば4週間空けて2回目を接種。13歳以上は1回の接種が基本です。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:定期接種(小学校6年生から高校1年生の女子)
接種回数:4回
子宮頸がんなど、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる病気を予防するワクチンです。2価、4価、9価の3種類がありますが、定期接種で2価と4価、任意接種で9価を受けられます。
それぞれの対象は2価が10歳以上の女子、4価は9歳以上の男女(男子は任意接種)、9価は9歳以上の女子です。小学校6年生になったらすぐに接種することをおすすめします。

髄膜炎菌ワクチン

種類:不活化ワクチン
定期接種or任意接種:任意接種
接種回数:1回
髄膜炎菌による感染症を予防するワクチンです。髄膜炎を発症した場合、病気が急激に進行します。難聴、神経障害や手足の切断など重い後遺症が残る場合があります。2歳から55歳の間に1回接種します。集団生活で感染リスクが高まると言われていますので、海外留学や寮生活を送る人などへの接種をおすすめします。